坪内隆彦が語るタゴールと天心

元日経記者の始めた「アジアの声」は「坪内隆彦『維新と興亜』研究ノート」に改変された。もちろん東日本大震災がひきがねであろう。その中で坪内氏はタゴール岡倉天心に共通する「アジア」を見いだしている。ホームページから転載したい。
http://www.asia2020.jp/tenshin/tagore-j.htm

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タゴールは、天心に極めて近似した思想をもっていた。1902年にインド滞在中の天心がタゴールとはじめて出会って意気投合し、影響をあたえあったのは偶然ではない。ともに二人は国際人であるとともに、アジアの伝統に価値を見出す国粋主義者であったからである。
 かつて評論家の竹内好は、天心とタゴールをともに「美の使徒」と位置づけた。
 タゴールは、天心と同様、アジア的価値観を高く評価し、たとえばこんなふうに語っていた。

「ここでわたしは、国民と国民との間に存在する唯一の自然の絆、緊密な友情の絆により、ビルマから日本にいたる東アジア全体が、インドと結盟していた時代を、諸君の知性に紹介せずにはいられない。そこには、人類の最も奥深い要件について、われわれの間に意見の交換を可能にするような、生きた心の通じ合い、一つの精神的な繋がりができていた。われわれの間はお互いの警戒心によって邪魔されることはなかった。相手を抑制するために、お互いが武装し合うことはなかった」、「〈われわれの関係は自己本位の関係や、お互いに相手の懐中工合いを探り、掠め取ろうとする関係ではなかった。〉〈観念や理想を交換し合って、最高に愛すべき贈り物をしたり、もらったりした。〉〈言語や習慣の相違はお互いの心と心との接近を妨げなかった。〉〈人種的誇りあるいは肉体的、心理的な優越感の傲慢さによって、われわれの関係が傷つけられることはなかった。〉〈われわれの美術や文学は心と心との結合という陽の光の影響の下で、若葉をのばし、花を咲かせた。〉〈そして土地、言語および歴史を異にする各人種が、至上の人間の一体性と最も深い愛の絆に感謝した。〉」(蝋山芳郎訳、「日本におけるナショナリズム」)